PC歴史ゲームとボード歴史ゲームの関係

Avalonhill亡き後、ボードウォーゲーム業界の最大手?と目されるGMT社。
そのGMTのボードウォーゲームのラインナップの特徴の一つは
カードドリブンと呼ばれるカードゲームの要素を取り入れた新型のボードゲームだが
その中の一つ、冷戦を扱ったTWILIGHT STRUGGLEがPCに移植されるようである。
ただ思うにカードドリブンは、
AIにとっては相性が悪い相手なんじゃなかろうか。

DecisionGamesも、SPIの大作War in EuropeなどのPC版を出している。
http://shop.decisiongames.com/SearchResults.asp?Cat=70
Matrix gamesもナポレオニックのEmpire in ArmsなどをPCに移植している。
このような移植版には、シングルプレイ用AIを備えたものとそうでないものがある。

また、郵便プレイのツールから派生した
CyberboardやVasaalといった
ボードゲームをPCでプレイするツールの改良も進んでいる。
日本の住宅事情の強い味方と言えよう。

このようにウォーゲーム界にも、ご多聞にもれずIT化の波が押し寄せており
拙僧は、この変化に比較的順応したゲームライフを送ってきたが
(コアなボードウォーゲーマーにはPCゲームに否定的なヒトも多い)
それでもPC歴史ゲームの進化に行き詰まりを感じた時には
ゲームの魅力の原点を求めてボードウォーゲームを振り返ったものである。

結局面白いPC歴史ゲームを作ろうと思えば
ボードゲームにおける思考ゲームとしての要素を
なんらかの形で包摂することが必要なのではないかと思う。
極端な例で言えば、アサシンクリ-ドには圧倒的な臨場感はあるが
プレイヤーがゲーム内で取り組むべき知的課題を欠いているのだ。
そこがグラフィックでは劣る太閤立志伝5やMount & Bladeに
はるかに及ばない部分なのである。



Age of Monarchs と Democracy under Siege

Age of Monarchs はウォーゲームデザイナーの Luca Cammisa 氏が
ウェッブ上で公開しているボードウォーゲームである。
氏はどちらかと言うと、PCウォーゲームの制作に携わってきたようで
過去作は、PCゲームとしては正直なところあまり評価が高いとは言い難いのだが
この Age of Monarchs は、AWEのビッグゲーム Europa Universalis
Napoleonic Wars のシステムで作ったような
つまりマルチプレイのカードドリブンゲームだ。
16~18世紀を通してプレイするグランドキャンペーン以外に
短期間のシナリオも用意されているので
Here I Stand や Virgin Queen のようなシステムで
もう少し後の時代をやってみたいというヒトにお奨めだ。
vasaalのモジュールも用意されているので
ソロプレイならコンポーネントを自作しなくてもすぐに始められる。

Age of MonarchsMap.gif

同氏のサイトではもう一つ、1930年代の政治外交戦をテーマにした
Democracy under Siege というゲームも公開されている。
Cataclysm Days of decisionGathering Storm と似たコンセプトだが
こちらは Twilight Struggle と同じように
政治外交のカードゲームにフォーカスしたデザインだ。
3人用ゲームでそれぞれ民主制、共産主義、国家主義の3陣営を担当する。
陣営が固定されているのはアメリカ、イギリス、ソ連、ドイツのみで
フランス、イタリア、日本は陣営を変える可能性がある。

最近 Triumph and Tragedy とか
30年代前半からプレイするゲームが結構出ているけど
枢軸側が(勝てないにせよ)負けない展開を考えようとすると
そのへんまで遡るということになるんだろうと思う。
面白いのは、このテーマはアメリカ人の視点で考えると
枢軸側とソ連が一時的にせよ手打ちに漕ぎ着けてたらヤバかったぞとなるようだ。
実際には、ソ連が中立でも米英が日独に勝っただろうけど
アメリカ人の戦死者は数倍になっていただろう。
一方、日本人やドイツ人が同じテーマを考えると
なんとかアメリカに寝ててもらって
その間にソ連を退治すれば良かったって方向がメインになるんだろうと思われる。
特に真珠湾攻撃後、ヒトラーが対米宣戦を思いとどまっていたら
ドイツは、少なくとも史実よりはかなり頑張れただろう。
口先だけでも、日本の「不意打ち」を非難する声明を出しておけば
議会は、ルーズベルトの方から簡単にドイツに宣戦できる状況にはならないだろうし
レンドリースを継続するにせよ、対日戦を優先せざるを得なかったはずである。
ほとんどの第二次世界大戦ゲームでは
1942年からアメリカが自動的に参戦できるルールになっていて
その結果1945年までドイツが粘れるかどうかみたいなゲームばかりなのだが
戦略シミュレーションとしてはいかがなものかと思うのである。
ソ連と違って、当時の日独には
対米政治工作を実行する意思と能力が無かったのも事実なのだろうが。

Red vs White vs Blue と Year of the Comet

拙僧は、所有ゲームが増え過ぎるのを防ぐため
戦術級は買わない、WWモノは作戦級も買わない
ブロックゲームは買わないなどの規則を守っている。
その拙僧がブロックゲームの紹介をするのもなんですが
ブロックさえ用意すれば簡単にプレイできそうなので取り上げてみました。

Red vs White vs Blue はタイトルから想像されるように
ロシア内戦を題材としたカードドリブンのブロックゲームで
赤軍と白軍以外に青=分離主義者のブロックが存在するのが特徴だ。
ただしプレイヤーは赤軍と白軍の2人で
分離主義者は中立でスタートし、ゲーム中にいずれかの陣営に加わる可能性がある。
カードデッキはそれぞれのプレイヤーに16枚づつで
GMTのカードドリブンとは異なり、ゲームジャーナルの関ヶ原大作戦のように
それぞれのカードの機能はかなり限定されている。
それぞれのプレイヤーは、各ターンデッキからランダムに7枚を引き
そのうち5枚を使用できる。
カードを使用する替わりに、不要なカードをデッキから永久除去してしまうことも可能だ。

pic2816174.png

Year of the Comet の方は、カードを使わない3人用のブロックゲーム。
1066年の戦いはイギリスの源平合戦みたいなもんだから
ヘースチングスやスタンフォードブリッジの戦いは何度もゲーム化されていて
S&T誌293号 にもフルフォードを加えた3つの戦いが収録されている。
ヨーロッパ史の中でもイギリス史のゲームが飛び抜けて多いことからして
アメリカ人にとってイギリスは特別な国なんだろうと思わざるを得ない。

彗星の年ってなんのことかと思ったら
ハレー彗星が来たのが、アングロサクソン年代記に記録されていたらしい。
この年は日本の扶桑略記や宋史、高麗史にも記録があるそうだ。
ちなみに最古の記録は紀元前240年の史記秦始皇本紀なんだそうで。

戦闘はバトルボードで戦われ
槍兵主体で白兵戦に強いイングランド軍(ハロルド)に対し
騎兵や弓兵を擁し柔軟性に富むノルマン軍(ウィリアム)
といった具合に、戦術的要素も簡単ながら盛り込まれている。

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